ハルジオン。
「う、ん……」

百合子が一歩近づく。

「今度は連絡してよね」

ディーゼル独特の匂いの中、百合子は泣き笑いの顔を浮かべた。


――ジリリリリッ!

発車を告げるベルが、二人だけのホームに鳴り響く。

「たっちゃん、私ね……」

「ゆり」

言いかけた百合子の頬を、達也の指が優しく撫でた。

そっと目尻を拭う。

「泣くなよ」

駅長のアナウンスに混じって、達也の優しい声が聞こえた。

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