ハルジオン。
「マジかよ」

達也は舌打ちした。

祭りの夜にカップルが密事を犯す話は良く聞いていた。

だが今はまだ夕方だ。

勘弁してくれよ、と呟き、倉庫を離れようとしたその時、女の横顔が見えた。

「ゆり……」

達也は言葉を失った。

一瞬で頭が真っ白になる。

見間違うはずがない。

今目の前で男に組み敷かれているのは、紛れもなくあの百合子だった。

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