ハルジオン。
信じられなかった。

好きだとか、嫌いだとか、そういう感情以前に、達也にとって百合子は決して汚されることのない聖域だった。

それなのに……

達也は血が滲むほど唇を噛んだ。

ただただ虚しかった。

百合子に男がいるなど露ほども考えたことがなかった。

やり場のない悔しさに息を殺す。

自分は特別な存在じゃない。そんなことは分かっていた。

なのに、すべてを失った気分だった。

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