ハルジオン。
「……ん」

ポキリと首をならし、伸びをする。

いったいどれくらい眠っていたのか。

朱が差し始めた空を見上げ、まだ陽が沈んでいないことに安堵する。

「帰るか」

達也は重い腰を上げた。

連休が開ければ、当たり前のように仕事が待っている。

いつもの日常が、また始まる。

達也は手にした雲母の欠片を見つめ、表情を緩めた。

来て良かった。

素直にそう思えることが嬉しかった。

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