ハルジオン。
腕時計を見る。

「六時過ぎ……か」

今から山を下りれば、東京行きの新幹線に十分間に合う。


「無理だよ」

「うわ!」

突然背後から声を掛けられ、達也はドキリと身を翻した。

「…………何だお前?」

洞穴の中に少年が居た。

むっつりと口を閉ざし、すり切れたトランプを繰っている。

「おい……聞こえないのか?」

「うるさいなあ」

少年は眉をひそめ、「後にしてよ」と言って再びトランプを繰り始めた。

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