ハルジオン。
「……ふん」

達也は読み終えた手紙を指で弾き、硬いベッドの上に体を預けた。

薄汚れた天井を眺めているうちに、いつもニコニコと自分の後を追いかけてきた靖之の顔が浮かんでは消えた。


父に手を引かれてあの町で暮らすようになって以来、靖之とはいつも一緒だった。

理由は未だに分からない。

たまたま最初に座った席が隣だったわけでも、家が近かったわけでもない。趣味が一緒だったとか、話があったとか、そう言うことでもない。そもそも達也はほとんど喋らない子供だった。

別に助けてやった記憶もないのに、いつの間にか側に靖之がいた。達也は背が高く、靖之は小さい方だったから、まるで親分と子分のようだと百合子に言われたことがある。

もっとも、靖之は誰とでも仲が良かった。

勉強もできた。

自分にはない物を持っていた。

だから、高校卒業後すぐに町役場に就職したと聞いた時は意外だった。

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