剣と日輪
「分かった。直ぐ行く」
 宮崎が皆に、
「貝殻島上陸作戦失敗」
 と告げ、斉藤がタクシーを手配した。宮崎と斉藤がタクシーに乗り、納沙布岬へ向った。
 途中真暗闇の路上で、必勝と遠藤にぶつかった。必勝も遠藤も無邪気な悦繹(えつえき)の徒と化していた。つい先程まで決死の淵を彷徨(ほうこう)していた両名には、ヘッドライトが後光に思えた。
(ああ。俺はこれで帰れるのだ)
 必勝の安堵は、タクシーの座席に腰掛けるや色褪(あ)せた。五人は凸凹の闇路を、無言で通り過ぎただけであった。
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