剣と日輪
春の雪編祖国防衛隊
 早大国防部は七月二日より十日迄、北海道の原野を北恵庭戦車部隊員として駆馳(くち)した。自衛隊の戒律は厳格で、朝礼時にちょっとでも服装に乱れがあろうものなら、その場で腕立て伏せを二十回させられる。上官には絶対服従であり、口答えは認められない。人格を制御されて、一個のファイティングマシーンに改造されるのである。
「新入社員の研修の一環として、自衛隊への体験入隊を取り入れている企業が増加している」
 という話を耳にするが、必勝は体験してみて、
「企業戦士の育成には最適だな」
 と痛感した。
「大学」
 は紛争と屁理屈、遊惰(ゆうだ)の溜まり場と化し、間違った自由意識に浸食された大学生は、現実社会とは遊離してしまっている。
「大学の学問は、社会では役に立たない」
 という企業側の苦言は、図星となっている。大学入試までの受験勉強で燃焼しつくした六十年代の若人は、残業、休日出勤当り前の、父親の働き蜂振りを粒(つぶ)さに観(かん)視(し)して成長してきた。高度経済成長の担い手は敗残兵たる十年代生まれの世代である。その親を蔑視するような、
「戦前の日本は悪である」
 と結論づけた、日本的道徳を全否定した恐るべき教育を、四十年代に生誕した今生の若年層は叩き込まれてきた。甚だしきは、
「米を食うな。米を食うと馬鹿になる。パンを食わなければ、アメリカ人のようになれない」
 と主食まで自己否定する教育者まで出てきている。
「履き違えた自由」
「欧米の猿真似、崇拝」
「暴走族やヒッピーといったわけの分からない連中」
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