剣と日輪
 それに公威がこのような秘密の訓練に参加していることがマスコミにキャッチされたら、祖国防衛隊は封殺(ふうさつ)されてしまうかもしれない。山本一佐は迷執(めいしゅう)し、公威に指令を下すのを渋っていた。他の祖国防衛隊員には次々に使命を与えたが、公威は放って置かれたままである。
 公威は山本一佐が課題を与えてくれないので、業を煮やして乃木坂で詰め寄った。
「何故ですか。命令してください」
 山本一佐は観念すると、
「よし、命令する」
 と姿勢を正した。
「四谷の六三四堂書店へ行き、そこにいる私の部下と接触し、市ヶ谷の日本傷痍軍人会館で皆と落ち合うように」
「はい!了解しました」
 公威はハッスルすると、四谷目指して人込にまぎれていった。
 山本一佐の老婆心は、空振りに終わった。祖国防衛隊員は全員日本傷痍軍人会館に集結し、山本一佐の講評を聴いて後解散したのである。
 公威は真直ぐに帰邸し、
「諜報活動」
 という必要悪を噛締めながら、暫し仮眠をとったのだった。
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