剣と日輪
「昭和元禄の今、全ての元凶である憲法の改正こそ急務である。楯の会独自の草案を作成してみたい者はいないか?」
「はい」
 忽ち十三名が挙手した。法学部学生は三名しかおらず、残りは経済と文学部の学生だった。
「私から以下の提案をしたい」
 公威はそう断ると十三名の隊員に、以下の様な問題提議を記入した紙片を回覧させた。

一、
新憲法における「日本」の欠落
二、
「戦争の放棄」について
三、
「非常事態法」について
(三島由紀夫「日録」より)

 十三名は八班とは別に研究班として、
「憲法研究会」
 を発足すると発表した。
「憲法研究会」
 は翌年一月に第一回討議会を、市ヶ谷の私学会館会議室で開く事になる。憲法研究会班長には早稲田大学法学部学生の阿部勉が、公威によって任じられた。
 憲法研究会を公威は重視した。研究会の討議会は毎週水曜日十八時から三時間開かれるようになり、それは昭和四十六年二月迄続けられていくのである。

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