剣と日輪
 翌二十日必勝は、
「三島先生の著書を連隊長に届ける」
 という名目で、市ヶ谷駐とん地に赴いた。公威の差金である。必勝が第三十二普通科連隊長宮田明幸一佐に目通りし、直に十一月二十五日のスケジュールを確かめたところ、
「生憎二十四日から二十六日迄富士練習場で行われる第一、三十四連隊の演習の審判に行かねばならない」
 という番狂わせの事実を耳にしたのである。
 必勝は、
(こりゃあ大変だ)
 と早々に市ヶ谷駐とん地を後にして、公威にありのままを告急(こっきゅう)したのだった。

 必勝の注進を受けて二十一日五名は、銀座中華第一楼に集結し、善後策を協議せざるをえなかった。公威は、
「決行日を変更する事はできない」
 と変更不可を先ず宣した。
「じゃあ、当初の計画通り総監を人質に取りましょう」
 必勝が、事も無げに提唱した。
「それしかないな」
 公威は諸手を上げた。
「諸君はどうだ?」
 小川、古賀、小賀は何れも同意した。
「よし」
 公威は益田兼(ましたかね)利(とし)東部方面総監に、アポを入れた。益田は難なく、
「十一月二十五日午前十一時の訪問」
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