剣と日輪
天人五衰編我が胸の思い
 正午のサイレンが鳴り響く。前庭には自衛隊警務隊、機動隊、そして報道各社のマスコミも併せて千名に及ぶ人頭が溢れている。何れも鉄面皮(てつめんぴ)か顔(がん)厚(こう)であり、神妙な顔つきのもの等皆無であった。
 必勝は公威の右背後に佇眄(ちょべん)した。公威は歩き回って立位置を探していたが、バルコニーの端寄りに足を止めると、演説を始めたのである。
「私は自衛官諸君に、このような状況で話すのは空しい。何故ならば私は、自衛隊というものを、頼もしく思ったからだ。日本人は経済的繁栄に現を抜かして、精神的に空っぽに陥って、政治はただ謀略、欺傲心だけ。大和魂を持っているのは、ただ一つ、自衛隊であるべきだ。我々は、自衛隊に対して、日本人の根底に有る歪みを正して欲しいのだ。我々は自衛隊に期待をかけた」
「何英雄気取りで言ってやがる」
「この野郎」
 といった野次が飛んだ。
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