剣と日輪
(誰も自分をテロリストとしか見ていない)
 公威は拳を振り下げた。
「静聴せよ、静聴だ。静聴せい!」
 公威の鬼神の如き面相に、野次が止まった。
「自衛隊が日本の」
「下へ降りて来い」
 自衛官達は公威の演説など、頭から拒絶していた。公威の肉声は、嘲弄(ちょうろう)に掻き乱されんとしている。
「日本の大本(おおもと)を正さねば、日本に明日はないぞと我々が感じたからだ。日本の根本が歪んでいるんだ。それを誰も気がつかないんだ。その日本の歪みを正すのが自衞隊、それが諸君の使命ではないのか」
「うるせえ」
「勝手なこと言うな」
「静聴せい、静聴せい」
 公威の声調は、空回りしていく。
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