剣と日輪
「それだから、我々は自衛隊を支援したんだ」
「ふざけるなあ」
「静聴せいと言うのが分からんのか。静聴せい!」
 罵声が又萎(しな)びた。
「それでだ、去年の十月の二十一日だ。何が起こったか。新宿で、反戦デーのデモが行われて、これが完全に警察の力だけで制圧されたんだ。俺はあれを見た日に、これはいかんぞ、これでは憲法が改正されないと感じたんだ。なぜか。自民党はだ、警察権力をもっていかなるデモも鎮圧できるという自信をもったからだ。自衛隊の治安出動はいらなくなったんだ。それは、すでに憲法改正が不可能になったことを意味する。分かるか、この理屈が」
 公威の問いに反応は無い。
「諸君は、去年の一0・二一以後、米国の押付け憲法を守る軍隊になってしまったんだよ。自衛隊が二十年間、血と涙で待った憲法改正の機会は、政治的プログラムからはずされたんだ。どうしてそれに気がついてくれなかったんだ。去年の一0・二一から一年間、俺は自衛隊が怒るのを待っていた。もうこれで憲法改正のチャンスはない!自衛隊が国軍にな
< 436 / 444 >

この作品をシェア

pagetop