桜の咲く頃 ~君に~
名前なんて…
「ん?」
ないのに…。
あの最悪な人からつけられたものしかないのに…。
「どした?」
…………
「…ないの。」
えっ。っと声を漏らす。
驚きと言うより絶句って感じの顔。
なるべく目を合わせないように目を伏せる。
「どういうこと?」
知らないよ…。
想い出したくないもん。
彼の手がスッと首筋に触れる。
ナイフの傷跡。
「んじゃ、俺が付けたげる♪」
「つけるって…ゎっ!」
ぐっと肩を引き寄せられた。
視界が真っ暗で一瞬なにがされたのか分からなかった。
私はすっぽり彼の腕のなかにはまってしまったんだ。