お伽話をキミに。




暫らくして戻ってきたその手には二つのマグカップ。




「ほらよ」




片方をずいっと俺の手に持たせると、龍ちゃんはもはや定位置と化したソファーに座りなおす。

そんな龍ちゃんの行動を横目に渡されたマグカップを覗いて俺は驚いた。




「…これ…」




マグカップの中身は、俺には決して出されることがないはずのブラックコーヒー。




「……悠斗、お前が動かなきゃ何も変わんねぇんだぞ」




唖然とする俺を余所に、コーヒーを綴りながら言葉を続けていく龍ちゃん。




「好きな女がいるなら、そいつだけの"特別"をわからせなきゃなんねぇだろ。好きな女とその辺の女は違う」




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