お伽話をキミに。
そ、そっか。
だってこれデート(仮)のチャンスなわけだし(多分)。
頭ではわかってるのに、さっきの会話のせいか上手く返信の内容が浮かばない。
「……悠斗」
「な、に」
「…さっきの会話は一回忘れて仲良くなることだけ考えろ」
まるで念を押すように言われて少し冷静になった俺は一度頷くと漸くメールを打ち始める。
"じゃあ一時に図書館で"
「…郁、俺帰って準備する」
「ん。俺は龍先輩ん家行くから」
「あ、本当に?俺も後で龍ちゃん家行くって言っといて?」
荷物を片付けながらそれだけ言って郁人の部屋を飛び出す。
部屋を出る直前に聞こえた
「悠斗の春はまだ遠いな」
この言葉の意味がわかるのは、今日の夜の話。