Re:
「なあ、お前はなんて名前だ?」

だんまりを決め込む僕に問いかける

「……」

「つーか、オレのことをナカニシなんて呼ぶなよ。毎日センセに叫ばれてユーウツなんだよ。」

わざと大きな溜め息をつきながら言う

「オレは『チュウ』だ。」

「チュウ……?」

つられるように言葉を発する僕は

「そ。ネズミっぽくて可愛いだろ?」

ニヤッ、と彼は笑いながら言う。

僕は彼の笑顔につられて口端が上がってしまう。

「んで?」

お前の名前は?

と、僕を指さす。

「……アツム」

「アツムか。アツムは何してんだよ?紙とペン持って。」

流石に

遺書を書こうとしてた

なんて言える筈もなく

また、黙ってしまう。

「こんなとこでまで勉強するなら教室戻れよ。」

「ナ…チュウくんは戻らないの……?」

精一杯の勇気を出して尋ねてみた。

僕の声は

キミには不快じゃないのかな?

そんなことを思いながら。

「『くん』もやめれ。お前、同じ学年だろ?『チュウ』だけでいいよ」

僕のネクタイについてる学年別に色分けされたタイピンを人差し指でつつきながら言う。

「オレ、今日は気分がノらないからいーんだよ。集中できない時に勉強したって何も得るものなんかねーからな。」

この人はなんなんだ・・?

まともに会話の出来ない僕を責めることもなく

みんなのように離れることもしない

僕に色々と話し掛けてくる

まるで未知の生物に遭遇した気分だった。
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