終止符。
ついさっき進む事を躊躇した道が、今度は大きく両手を広げて、向こうからやってきた。

ここで踏み出さないときっと出来ない。

そう思いながらも、心は揺れ続けている。

黙ったままの私を見て、落ち着きの無くなってきた男が口を開く。


「お金、困ってたりしない?」


男の言葉が、何よりも今の私に突き刺さった。


「うん。いいよ…」

言わざるを得なかった。


答えると、男の表情は驚きと喜びに満ちていた。


「や、マジで?ハハハ!いいの?」

「あ、じゃーここ出ようか?ねっ」


私は差し出された男の傘に入った。

そして男に付いて行く。


「いやぁ、君みたいな真面目そうなカワイイ娘がねぇ~ハハハッ。やっぱり友達とかもこういう事してるの?」

「…知らない」


どうでもいい会話。

男の傘は、コンビニで売ってる315円のヤツで2人で入るには狭く、私の顔半分には雨が当たっていた。


< 23 / 116 >

この作品をシェア

pagetop