モザイク
高い壁
かなりマズい状況のようだ。神宮寺も桜井も感じていた。
「まさか、この短時間で同じ症状の患者に対面するとは思わなかった・・・。」
そう言ったのは神宮寺だ。
「ですね。」
桜井はただ同意した。
「それも今度は・・・子供だ。」
さっきカナと一緒にいた赤ん坊が、ふたりの前にいた。
「神宮寺さん、どうすれば?」
桜井も話を聞いていた。だから、心配した。
この子の母親も、そして救急隊員も、直接この子を抱いてしまったらしい。と言う事は、言わずもがなだ。じきにモザイクになっていく運命だ。
「隔離するしかないだろうな・・・。」
母親と救急隊員を別室に待たせてある。理由はそのためだ。
「やっぱり、それしかないですか・・・。」
今のところ、ふたりの様子は普通だ。何の確証もないまま隔離していいのだろうか?このモザイクは本当に感染するのだろうか?桜井は自問自答した。
「桜井、常識を捨てろ。今、俺たちは、俺たちの常識の範疇外と戦っているんだ。そんな俺たちが常識に捕らわれると言うのは、自分に枷をはめているようなものだぞ。」
「は、はい。すみません。」
「わかったら、ふたりに事情を話して来い。」
「あ、はい。」
桜井は母親と救急隊員の元へ向かった。

「うちの子は大丈夫なんでしょうか?」
桜井が部屋に入ってくるなり、母親は聞いた。
「あ、え、それは・・・。」
言葉を濁すしかなかった。
「それより、ふたりにお話があります。」
「ふたりって僕もですか?」
救急隊員は立ち上がり聞いた。それはかなり驚いている様子だった。
「そうです。あなたにも聞いてもらう必要があります。」
桜井の表情は真剣だ。その表情を見て、救急隊員は腰掛けていた椅子に再び座った。
「話して下さい。」
「いいですか。まず、一番始めにお願いがあります。これから話す事は、かなりショックを受ける内容だと思います。でも、落ち着いて下さい。落ち着いて話を聞いて下さい。」
「はい、わかりました。」
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