モザイク
「ど、どうしたんだ?あらたまって・・・。」
「俺を、俺の体を、お前に提供する。だから、この不可解な病気を治す手がかりを見つけてくれ。」
「お前・・・それは・・・。」
「人体実験を、俺でしてくれって事だ。もう、マウスで実験とか悠長な事言ってる場合じゃないだろ?それだけ事態は切迫している。だから、わかってくれ・・・。」
「わ、わかった・・・。」
そう言うしかなかった。

「意外に早かったな・・・。」
丹沢は呟いた。
「早いってお前・・・。」
「あぁ、徐々にだが世界がモザイクに染まって来やがった。さっきの患者みたいに、俺も適当な所にしまっといてくれな。」
「わかった。」
神宮寺の目に涙が浮かんでいた。

「丹沢、どうだ?」
椅子に腰掛けた丹沢の瞳に、神宮寺はライトをあてた。
「光は感じるな。」
「そうか。」
そう言いながらパソコンに入力した。その後ろでは、ビデオカメラが淡々とふたりの様子を写している。
「ちょっと目を大きく開けてくれ。」
「こうか?」
神宮寺に触れさせるわけにはいかない。だから、丹沢は自分の手で上下のまぶたを思い切り開いた。
「あぁ、助かる。すまないな。」
「!」
丹沢の言ったとおりだ。黒目は小さなモザイクに変わっている。
「丹沢・・・。」
「言ったとおりだろ?」
「あぁ、そうだな。」
神宮寺は考えた。なぜ、このモザイクが拡がっていくのか。それもどうやって衣服まで拡がっていくのか。いくら考えても、答えを導き出すのは困難だった。
「どうだ?治せそうか?」
丹沢の声は、神宮寺なら治せると言う期待に溢れていた。
「あ、あぁ・・・。こうしてお前の症状を見る限り、おおよその状況は理解できた。これなら治療方法を見つけるのも容易いはずだ。」
「さすがだな。」
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