モザイク
心躍らず
神宮寺は病院を飛び出した。いくら学校に電話をかけても、いっこうに誰も電話に出ない。
長沢たちの話が真実なら、大江と言う教師も感染しているのは間違いない。その大江を隔離しなければ、この奇怪な現象は一層拡大してしまう。だから、急いでいた。

「表から出るのは無理そうだな・・・。」
まだモザイクになっていないガラス越しに外の様子を伺う。事故の取材と思われるマスコミがかなりいる。そして、事故以外に病院のモザイクになっている姿を写しているのは、火を見るよりも明らかだ。
それを確認してから、地下の駐車場に向かった。

オレンジ色の光に神宮寺の車は照らされていた。まるで、自分がここにいると主張しているように思えた。
キーを捻る。すると、爆音と共に車は目覚めた。ギアを一速に押し込み、ゆっくりとクラッチを繋いだ。
地下駐車場を出ると、今度は陽の光に照らされる。そこでもオレンジ色だ。そう神宮寺の車はオレンジ色のボディーカラーなのだ。いつもこの色を見るだけで心躍る神宮寺だが、今日は心が躍るはずもない。少し鬱な気分でステアリングを握っていた。

長沢と佐々木が通っていた高校を目指す。早く、早くと気ばっかり焦るが、その神宮寺の思いは叶わない。なぜなら目の前をいくつものブレーキランプが塞いでいたからだ。
「くそっ。こんな時に・・・。」
事故の影響だろう。神宮寺はステアリングに八つ当たりをした。

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