モザイク
「何?」
ふたりはテレビを再び見た。
するとレポーターの右半身がモザイクに変わっていた。その姿を見てスタッフが叫んだのが、テレビから聞こえてきたのだ。
「えっ、あ・・・。」
カナは背筋が寒くなった。なまじ生身の部分があるのが、恐怖を加速させていた。
「ほら、お父さん・・・逃げなきゃ・・・逃げなきゃ・・・あんな風になっちゃうっ。」
涙を浮かべ訴えた。
「カナ、これは神様がお怒りになっているんだよ。そうでなければ、こんな不可思議な事が起こりえるものか。だから、お父さんは祈ってくる。」
そう言って部屋を出ていってしまった。

「チロル・・・私、どうしたらいいの?」
もうカナにはチロルしか頼るものがいなかった。しかし、いくら問いかけてもチロルが答えるはずもない。ただ、無邪気な瞳でカナを見つめていた。
「何も答えてくれないね。」
カナは呟いた。そして、気がつかなかった。チロルの瞳の奥にある確固たる意志に。

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