モザイク
はじまりの種
誰かが言った。
「モザイクって知ってる?」
「モザイク?」
聞いたのは狐だった。尾を振りながら聞いた。
「うん、人間の見ている箱の中にあったんだ。どうやら、色んなものを隠すために使うらしい。」
声を上げていたのはリスだった。小さな体が森に隠れ、そしてその俊敏さからはじめ気がつかなかった。
「で、それがどうしたんだ?」
「どうしたんだって、誰かが言ってたでしょ?人間を見たくないって・・・。僕らは人間も含めて、この惑星に生かされている。ある種の運命共同体だよね?」
「あぁ、そうだな。」
「だから、僕たちは人間の事を憎んでいても、人間と言う種を滅ぼしてはいけない。どんな事があってもね。」
「要点を話せ。」
狐はじれた。それは話を聞いていた他の者たちも同じだった。皆、リスに催促をする。
「簡単な事だよ。人間を、人間の作った物をモザイクにしちゃうのさ。それなら、僕らの力で行える。」
リスは笑った。

「そうか、それはいいな。」
狐ははしゃいだ。
「そうだね。」
池で泳いでいたフナも賛同した。
「そうしておくれ。私も賛成だ。」
花を咲かせた桜が言った。人間を見なくて済むと聞いただけで、心なしか花の色づきが鮮やかになっていた。
「待て。」
誰かが異を唱えた。皆が一斉にその声に反応した。声の主はチロルだった。
「どうして?人間をこのままにしてていいの?」
リスは聞いた。
「いいとは思ってないさ。」
「だったら何故?」
「なにも全員対象にする事はないだろう。」
チロルの言葉に納得する者もいた。しかし大半の者は反対だった。
「そうは言うが、人間は皆同じでしょう?」
「同じではない。特別な者はいる。」
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