モザイク
本来なら業務中に居眠りなどあり得ない。それも金田だけでなく他の看護婦も一緒にとなると、確かに婦長に聞かれていい話ではない。桜井は納得した。
「それで一瞬ですけど・・・目の奥がすごく痛くなって起きたんです。他のみんなもその時起きたから、きっと同じようになったんだと思います。」
「それで?」
「一瞬で目の前の景色がモザイクに変わりました。でも、寝ぼけていたのか、まぁ疲れも溜まっていたんだと思うんですが、痛みが消えたのもあってまた寝ちゃいました。」
「その時だけですか?モザイクが見えたのは?」
「はい。次に起きた時には普通の景色に戻っていましたから、特に何も感じず仕事に戻ったと言う訳です。」
桜井は感じた。はじめに運ばれてきた運転手。その運転手がモザイクになった時間。そしてこの金田がモザイクになった時間。話を聞く限り、金田が完全にモザイクになった時間の方がはるかに短そうだ。
<先輩に伝えた方がいいよな?>
金田に礼を言い、首からぶら下がっているPHSを取り出し、神宮寺に連絡を取ろうとした。

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