モザイク
ガラスの向こうに見えるもの
ここはどこなのだろう?神宮寺は思った。さっきまでの景色が一変した。右も左も見渡す限りモザイクしかない。見ていたテレビも、今は音声しかわからない。音声がなかったら、どこに置いてあるかもわからないだろう。
「?!」
急いでここから逃げだそうとしたが、もはや出口もわからなかった。
「どうする?」
と言っても何も考えなど浮かばない。誰かの助言が欲しかった。しかし、それは無理な相談だ。
ゆっくり深呼吸をし、心を落ち着かせようとする。焦っていては何もいい考えは浮かばない。そう思っての事だ。しかし、気持ちはいくら深呼吸しても落ち着かない。だから、いい考えなど浮かぶはずもない。神宮寺は頭をボリボリと掻き、イライラを募らせていた。

その時だ。PHSが鳴った。
「せ、先輩。」
電話から聞こえてくる声は桜井だった。
「どうした、桜井?」
「いや、先輩に伝えたい事が・・・。」
「伝えたい事?」
「はい、そうです。」
神宮寺はまずこの状況をどうにかしたかった。出来れば電話を切りたいと思っていた。あからさまに、嫌そうな感じを出したつもりだったが、鈍感な桜井には通じなかった。
桜井は一方的に話しはじめた。
「病院がモザイクだけになってしまいました。」
神宮寺が病院を出た時には、もう大分モザイクに変わっていた。今更報告されなくても容易に想像できた。
「なんだ、そんな事のために電話してきたのか?もっと他にするべき事があるだろう・・・。」
神宮寺は言う。それを遮り、桜井は続けた。
「それだけじゃないんです。あの丹沢さんが連れてきた高校生、いますよね?あの子たちが見ている景色がモザイクじゃなくなったんです。」
「本当か?」
「はい。僕の事は相変わらずモザイクに見えるみたいですけどね・・・。」
神宮寺には桜井の言っている意味がわからなかった。桜井がモザイクのままで、景色がモザイクでないと言うのはどう言う事なのだろう。
「もっとわかりやすく話せよ。お前の言っている意味がわからない。」
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