借金とりとおにごっこ!?
「見覚えあるか?」
「うん、ここだよ、ここ」
目を閉じると
繊細に、小さい頃の情景が浮んできた
よく、お父さんが帰ってくるのを
この玄関で待ちわびていた
あ、ここの階段で
一人グリコとかやってたっけ?
右手と左手でじゃんけんして
一歩も階段上れなくて、
結局普通に上がったっけ?
懐かしいな..............
前まで、全然思い出せなかったことが
こんなにはっきり思い出せる
人間の記憶は
忘れたと思っていても
ほんとは、全部おぼえていて........
でも、無意識に鍵をかけ
その鍵を見つけた時、ふと思い出すのかな?
この家のことも
小さい頃の記憶も
心の奥に閉じ込めて、鍵かけて、
見ないふりをしてきた
でも、この家にいると
過去と向き合えるような気がした
あふれ出すように
閉じ込められていた記憶がよみがえってくる
「夕矢、私の思い出話していい?
過去と向きあうために、話したいの」
「聞くよ、全部」
畳の上に置いてあった座布団を敷き
机をはさんで向かい合うように座った
「まず最初に、約束して。
今から話すこと、誰にもいわないで」
「分かった」