ダウト-doubt-
出会った日の事。
初めてドライブに行った時の事。
あたしが号泣した時の事も、あの人に本気で怒鳴られた日の事も、悔しいくらい覚えている。
仕事の話をする時の、子供みたいな表情。
あたしの話を聞く時の、優しい横顔。
他愛ない事だと、今まで気にも留めずにやり過ごしてきた沢山の事が、あたしのなかに、ちゃんと残っているらしい。
思い返しても、何も戻ってこないのは分かっている。
それでも、記憶を辿っていく程に、確かにあたしは愛されていたんじゃないかと、錯覚してしまいそうになる。