紳士的なLady
「気付いてたんだ」
「当たり前でしょ。気配がしたんだから」
ここは屋上。
昨日の件もあって、ここに架月が来る事は、何となく分かった。
「早川、どうすんの?」
「どうしようもないね」
「そっか」
今の自分の顔を見られたくなくて、背を向けて、素っ気無く答えた。
ザァッ、と強い風が吹き、スカートがバタバタと揺れる。
唇を噛みながら、「何て私は弱いんだろう」と、改めて感じた。
強がって、意地を張って、千波を傷つけた。
でも、ここで逃げたら、私は千波に合わせる顔が無い。
鈴音にも、架月にも。
「満原、俺も行くな。もう授業始まるし」
私の背中に、架月の淡々とした声が降ってくる。
コクリと頷くと、架月はそのまま出口へと歩き出した。
弱い、弱い私。
誰かの傍に居たいのに、私も誰かに居て欲しい。
遠のいていく、架月の背中。
無性に恋しくなってしまった。
「……っこんな時ぐらい、ここに居てよ……!」
涙を零しながら、架月の腕を引き止め、額を架月の背中に当てる。
今だけ、今だけ、今だけは。
架月に、居て欲しい。