紳士的なLady
天井に向かって伸びた手が、左右に揺れている。
「センセー。架月見つかったんだし、もう良いじゃないですか。
早く授業しましょうよー」
普段なら苛つくその口調に、不思議と苛立ちは無かった。
「小野寺……」
あと20センチはあるところで、拳を止めている教員。
その教員を、いつもとは違う、不敵な笑みを浮かべた小野寺。
その小野寺を、少し驚いた顔で見ている架月。
何だか可笑しな光景だった。
「今日のトコ、テスト範囲なんですよねー?
俺、また赤点取るかもしれないから、みっちり教えてもらおうと思ってるんですよ。
だーかーらー、早く授業を始めましょお!!」
手をパンパンと叩きながら、教員の拳を丁寧に下ろし、架月の背中を押して席に着かせる。
いっつも騒いでいるだけの馬鹿だと思ってたけど。
本当に良かった。
今日だけは、すごく有難い。
ごめん、小野寺。馬鹿にして。