春も嵐も
納得したとでも言うように、藤見椎葉はルージュをひいた唇の両端をあげた。

「さすがね、顔がいい人は頭もいいのね」

淡々と述べるその言葉は、嫌みだった。

「そうよ、あなたの読みの通りよ」

勝ったとでも言うように笑うその顔は、女王だ。

「口うるさいあなたを利用して、私はこの商店街を藤見のものにするつもりだった。

けど…まさか、バレるのがこんなにも早かったと言うのは計算外だったわ。

あなたに恋をしたと言うのは、アメリカンジョークにしか過ぎないわ」

「へえ」

一体どこからそんな余裕が生まれるのやら、不思議なのもいいところだ。
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