強がりも全部受け止めて
玄関で向かい合い、お互い動けずにいる中で、最初に動いたのは彼女だった。




『ごめんなさいっ!!!私がいけないんです!彼女がいるって知ってたのに、気持ち止められなくてっ。ごめんなさいっ。ごめんなさい!!』




ひたすら謝ってくる彼女の肩に手を置いて、『よせ』と言った彼の言葉は、彼の気持ちが、もう私にはないんだと教えてくれるのには十分なものだった。







「その子ね、彼の会社に今年入社したばかりの新人で、教育係として彼が仕事を教えていたんですって」




最初は教育係としての仕事が本当に忙しくて私と会えなかった、と彼は言った。




「でも仕事の相談を受けてるうちにお互い気になり始めたらしくて・・・」




多分その頃だろう。連絡が来なくなり始めたのは。




「彼女との成り行きを説明してくる彼に、“私に対して悪いと思わなかったの?”って聞いたわ」





『…彼は何て?』





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