愛乗りシンドバッド
「っと、……いて」

するとハルの奴、
俺の膝を上手く折って
そのまま俺は絨毯の上に
押し倒されてしまった。

乗っかってくる
奴の体の形が、
不可抗力にも俺の腕にちょうど
収まってしまった。

柔らかい頬を
すり寄せてくるハル。

って、こらこら。

「……王家の秘術ってさ、
かつてムハンマドが
悟りを得ようと
『ヒラーの洞窟』っていう
神聖な地で、
アラー神より
預言者の召命を得たのが
始まりだったんだ」

ムハンマドっていうのは
さっきもアッバーサさんが
言っていた、
要は宗教の開祖だ。

ハルはなんだか
怪しいことを言いつつ
俺の胸に自分の体を深く
うずめさせていくばかりか
モソモソと手足まで
もどかしく動かしはじめた。

なんなんだ……いったい。

しかしその時――。

『今夜は抱きしめてほしい』

アッバーサさんの時と
似たような言葉が
確かに俺の心にそう響いた。
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