愛乗りシンドバッド


――カツ――カツ

それはレンガの階段を登ってくる
乾いた足音。

思いのほか入口の
すぐ近くからだった。

……ゲッ。
嘘だろこんなタイミングで。

傍に来るまで
気づかなかったのは
砂混じりの螺旋階段のせいだ。

砂が石綿みたいに
音の伝導に隔たりを
生じさせていたんだろう。

慌てて俺らは
体を引き離した。

「……おや。
こんな離れくんだりで
明かりを消して男女が2人。
出過ぎた事で
ございましたか」

階段を上ってきた
ボウッとした灯に
照らされているのは、
髪の毛を真ん中で
きちっと分けた
綺麗なおでこに切れ長の目。

心配でもしてくれたのか、
この塔を教えてくれた
さっきの召し使いであった。

……今の状況に
夢中になりすぎてて
若干気恥ずい。

いや、若干どころではない。
茹でる。
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