文系男子。
沈黙が広いスイートルームに満ちた。
いつまにか俺と真朱はテレビの前のソファに座ってて、マルテはベッドで寝てて、スゥイーノはノートパソコンと睨めっこしている。
「…マソオ」
「…ん?」
「俺の事、嫌いか?」
「………嫌い、じゃない」
「…そ。良かった」
そう言えば、マソオは何、急に、と笑った。
ソファーについていた左手に、マソオの手が重なる。
「…ジョーヴェは」
近くで、気持ちの良いマソオの声がする。
「ピアス一杯してるね」
「…ああ」
「指輪も」
「一つやろうか?」
返答を聞かずに、人差し指にしていたシルバーリングを引き抜いて、マソオの左手を取り、薬指にはめてやる。
「サイズが合わないからいい」
「あったら貰うのかよ」
「……あっても貰わない」
嫌々をする様に頭を振った。
「一途だねえ、マソオは」
呟くと、照れたらしく、マソオが俺の肩を押す。
そして一生懸命俺の人差し指に指輪を戻そうとし始める。
俺はその手をやんわりと阻んだ。
「…貰えないよ。こういうのって高いんでしょ?」
中にシルバーって掘られてるし。
「貰いもんだから買ってねえよ」
「なら、余計に」
「くれた女がどんなか忘れたから要らねえ」
「…タラシ」
「違うね。向こうが勝手に寄って来てプレゼントを押し付けるんだから」
マソオはサイテーと言うと、ソファーの上に指輪を置いた。
「ジョーヴェなんか、大っ嫌い」
後ろのスゥイーノが吹き出した。
「何とでも言え、小娘」
俺はそう言うと、煙草に火を付けた。