文系男子。

「ちょ、ちょっと」

真朱が慌てた様に中にあった鞄を掴んだ。
俺はその奥に座る不敵な笑みを浮かべる男を睨んだ。

「…松葉丁子」

「おや、何処かで……ああ、」

「何の真似だ?」

「単なる偶然ですよ」

「二度と顔を見せるなと言った」

「運命には抗えないんですよ」

また、顔を合わせることになるかもしれませんね。

その時は、どうぞ御贔屓に。

意味深な言葉を言い放ち、ドアを閉めて下さい?と丁寧に言われるがまま、ドアを閉めていた。

「後でじっくり話聞かせてもらいますよ」

坂本が真面目な顔をして言った。

俺は、ああ、ともうんとも言わずただ立ち尽くしていた。
さっきまで、怒りが体を支配していたのに、今は虚無感だけだ。
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