籠の鳥
『お兄ちゃんも何か言い返せばいいのに…』

『…いや、弱いのは本当だし…それに、この村に妖怪が現れたりなんてしないから、弱いままでいい』

『………』

あくらは困った表情をして男の子の怪我を手当てした。

『またいじめられても?』

『その時はまた、あくらが助けてくれるだろ?』

そう言って笑った。

あくらも溜め息をついて笑う。



男の子は喧嘩も戦争も嫌いだったから、剣術も体術も学ばなかった。

そのため運動神経もあまりよくない。



こんな駄目で双子の兄とは呼べない男の子でも、唯一得意なことがあった。



それは裁縫。

着なくなった着物を切って縫って人形を完成させた。



あくらもそれが大好きだった。

いつか一緒に作った人形はタンスの上に並べてある。



ただ、日にち違いの双子の妹が喜ぶ人形を作り続けた。
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