籠の鳥

事情

ざくやが大きなあくびをした。

僕は心配そうにざくやを覗く。

「大丈夫ですか?ずっと眠らなかったのでしょう?」

「ああ、大丈夫だ。慣れてる」

「さやは着いたら、話がつくまでどっか行ってる。あいつと一緒の空間にいたくない」

さやは言うなりそっぽを向いた。


そんなに妖怪には嫌なのだろうか?

何だかんだ言って、僕もひどい目にあうのかな…


さやを見て不安な顔をしていたのか、ざくやは僕の背中に手を当てて覗き込みながら優しく言った。

「大丈夫。俺もずっと一緒にいるから」

「はい…」

僕も少し笑い気味に返す。

それを見届けてからざくやは前を見た。

「着いた。あそこだ」

ざくやに言われて前を見ると、大きな家屋が建っていた。

が、黒くてボロくて、少し不気味さが混じる。

「また一段と汚れたなぁ。派手にやられてるし」

「誰にですか?」

「妖怪に」

「妖怪!?」

僕は足が動かなくなったが、ざくやは背中を押し続けていた。

「そりゃあな、この世界に妖怪を避けられる場所なんてねぇよ。それに、妖怪の死骸にはその妖怪の残留思念が残る。それがまた新たな妖怪を呼ぶのさ。特に、死骸を集める奴のとこにはね」
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