籠の鳥
「蜂みたいな奴らだ。1匹の死体が仲間を呼ぶ」

さやはそう言った。



家屋の前まできて、さやは狼の姿に戻る。

僕は「大丈夫なの?」とさやに訊いた。

「別にここら辺を妖怪がうろつくのはいつものことだ」

「それに、ここら辺は怖くて誰も近付かない」

そう言っていると、ドアがキイィと音を立てて開いた。

さやはざくやの後ろに隠れる。

「やぁ、そろそろ来ると思っていたよ」

中から顔を出したのは、眼鏡をかけ、髪は天パでぐしゃぐしゃの男だった。

黒ずんだ白衣を来て不気味に笑っている。



僕も咄嗟にざくやにくっついて服を握った。

その様子を見てざくやはその男に顔を近づける。

「マオ、また寝起きだろ?髪酷いぞ」

「もち、ヒゲも」

「やかましいわ」

ざくやは自分のヒゲを指差す男に一発頭を叩いた。



その拍子に僕と目が合う。

僕は余計ざくやにくっついた。

「おやおや、見ない顔だね。ざくやの子供かい?」

「女房は今も昔もいねぇよ。こいつは昨日見つけたんだ」

男は僕を見て、何かに勘付き目の色を変えた。



ざくやはニヤッと笑う。

「お前も気付くのは早いな。こいつが"妖怪を惹きつける青年"だ」
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