籠の鳥
「……………?」

そのままさやはざくやの肩に倒れかかった。

ざくやは解らぬ顔でさやを見る。

「……………………………………………………………怖い」

ボソッと呟いくと、ざくやは少し間を空けて理解した。

「はいはい」

さやに優しい笑みを向ける。

それが何より嬉しくて…。



初めて感じたこの温かさ―。

一生手放したくないと思った。



「ざくや」

「ん?」


もし最後に残されたこの命なら…


「さやは」


残される命だったのなら…


「ざくやについてっちゃ、駄目か?」



この強く生きる人間を守りたい。



ざくやは笑って頷いた。

それを知って狼に戻る。



黒い身体が闇に呑まれぬよう、ざくやはずっとさやに触れていた。
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