貴公子と偽りの恋
「それは、紳一にも言われた」

「弟くんに話したの?」

「ん…、話したというか…」

昨夜の紳一との会話を、恵子に全て話した。

「そっか…。私も弟くんと全く同意見だなあ」

「そうかなあ…」

「優子、ちょっとごめん。じっとしててね?」

「え、何?」

「いいから、動かないで」

恵子は両手を私の顔に向かって差し出して来た。
言われた通りにジッとしていると、恵子の指は私の眼鏡のフレームに触れ、スッと眼鏡を外されてしまった。

「ちょっと、恵子…?」

「まだよ。もう少しジッとしてて?」

そう言って恵子は立ち上がり、私の横に立った。
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