貴公子と偽りの恋
「何よ?」

恵子に目をやったけど、急に眼鏡を外されたので、恵子の顔はボンヤリとしか見えない。

「いいから、前を向いて」

「う、うん」

「ちょっとごめん」

そう言うなり、恵子は後ろから私の髪の毛を引っ張った?

「ちょっと、痛いよ…」

「ごめん、シュシュ外しちゃった」

「言ってくれれば自分で外すのに…」

シュシュでまとめられていた私の長い髪が、解放されて私の肩にフワッと掛かったのが、自分でも分かった。

恵子は席に戻り、私の顔を見ながら、私の髪を持ち上げたり撫でたりした。

「恵子、何してるの?」

「ん…思った通りだわ」

「何が?」

「優子って、すっごい可愛いよ」
< 16 / 169 >

この作品をシェア

pagetop