貴公子と偽りの恋
「一年以上もか?」

「二年半だよ」

「え? じゃあもしかして、一昨年の短冊にも…?」

「うん…」


「参ったな…。負けたよ」

負けた?

「姉貴?」

不意に紳一が両手で私の肩を掴んだ。

「な、何?」

「頑張ってみろよ」

「え?」

「姉貴は可愛いんだから、もっと自信を持てよ」

「な、何言ってんのよ。からかわないで」

「からかってねえよ」

紳一の目は真剣だった。
男の子から『可愛い』って言われたのは初めてだし、私はどうリアクションしていいのか、分からなかった。

「短冊に書くだけじゃ、姉貴の願いは叶わねえぞ」
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