雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

③別れのとき

誕生日の翌日。

ベッドの上で、前に遼からもらったぬいぐるみを胸に抱きしめ、薬指で自分の唇をなぞる。


からかい半分で遼の寝室に入り、どんな反応をするのだろうかと楽しみにしていたら。期待以上のことを遼はしてくれた。

遼は真面目そうだから、本気で好きになった人にしか手を出さないと勝手に思っていた。

今まで持っていた彼のイメージとは違ったけれど、裏切られたような感覚はない。

むしろ意外な一面を発見して、彼への興味が増えてきた。


自分の部屋から出て兄のために遅い昼ご飯を作っていても、遼と交わしたキスの熱が蘇ってくる。


――あれは浮気?

普通に考えたらそうなのかもしれない。
まだ響とは完全に別れてはいない。

なのに、罪悪感は思ったほどなかった。
それどころか小気味よくすら感じた。
響も陰で同じことをしているはずだから。

それに、彼の気持ちが何となく理解できた気がした。

大事な人がいるのにも関わらず、他へ目移りする気持ち……。
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