雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「俺が好きなのは……、紗矢花だよ」
「………え?」
「ずっと、好きだった」
隠し続けてきた想いが、とうとう口を衝いて出てきてしまった。
紗矢花は呆然と俺の顔を見つめている。
「あ……私も、好きだよ?」
目を泳がせ、動揺した様子の彼女は紅茶をテーブルの上に戻した。
「――違う、紗矢花の言う好きと、俺の好きは同じじゃないよ」
「……」
「彼のことを忘れられないことぐらい、わかってる。だけど……俺の気持ちも知って欲しかった。紗矢花を大切に想うのは、黒瀬響やジンだけじゃないってことをわかって欲しくて」
「……でも私は。響のことを忘れられそうもないよ」
うつむく紗矢花の瞳が涙で歪んだ。
「わかってる。俺はいつまででも待つから。もし彼とよりを戻すのなら仕方がないし。そのときは潔く諦める。
だからそれまで、紗矢花のことを好きでいさせてほしい」
言い終えると、紗矢花の膝に涙の雫が落ちた。
それが喜びの涙だったらよかったのに。
今の自分にはただ、髪を撫で、紗矢花が泣きやむのを待っていることしかできなかった。