雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
第3章
①曖昧な関係
遼の告白から数ヶ月が過ぎ。
すでに枯れ葉の舞う季節になっていた。
歩道には朱いナナカマドの実が落ちて、人や車に踏まれ押し花のように潰れている。
私はそれをよけながら待ち合わせの場所へ向かった。
遼とはお互い、仕事と就職活動で忙しく、会う回数が前よりだいぶ減っていて。ずるい私は答えを出さないままでいる。
なるべく二人だけで会わないようにして。
家に誘われたときは必ず陽介か兄も一緒に。
遼も「付き合ってほしい」とかそんな言葉は一度も口にしなかった。
まだ私が元彼のことを忘れていないのを知っているから。
今目の前にいる、響のことを……。
「久しぶりだな」
待ち合わせをした居酒屋の前にすらりと佇む彼は、仕事帰りに直接来たのかスーツ姿だった。
「うん……」
私はどんな表情をしていいのかわからず言葉少なに頷き、入口をくぐる彼のあとへ続く。
響とは電話やメールで連絡を取っていたものの、会う気がしなくてずっと顔を見ていなかった。
やっと最近、気持ちも落ち着いてきて。彼からの誘いで一緒に食事をすることになった。
嫌いになって別れたわけじゃなかったから、彼の姿を見て懐かしく思う。
やっぱりまだ好きなのかもしれない。