雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~



――雨の音がする。

私はその心地よい音を聴きながら、響の寝顔を見ていた。

長い睫毛。薄いくちびる。シャープな顎のライン。

そのどれもが愛おしい。


ただ、女の影さえなければ完璧なのに。

私は響の……彼女?
遊びの女?

体を重ねたあとすぐ帰されるのは本命の可能性が低いと、よく読むファッション雑誌には書いてあった。

いつもというわけではないけど。時々、23時よりも前に帰されることがある。次の日は仕事だからと言って……。


はっきりとした証拠がないから。疑いだけが募っていって、心が壊れそうになる。

実際に浮気してるところを見ないと。
証拠をつかまないと。

現実を受け入れられない。
この気持ちに区切りがつかない。


ドラマみたいに浮気の現場に遭遇するなんて、一体どれくらいの確率なんだろう?

それこそストーカー並みに見張ってないと無理だと思う。
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