雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~


家に帰ると玄関に靴があったので、珍しく兄が帰ってきているらしかった。

最近はお互いすれ違っていて、家で会うことが滅多になかった。


「お兄ちゃん、久しぶり」


リビングのソファに兄の姿を見つける。


「おぉ、久しぶりだな」


一緒に住んでいるのにこの会話は何だろう。

兄はソファに大きな体を預け新聞を読んでいる。

私はテーブルを挟んで向かい側の座布団に座り込んだ。


「ねえお兄ちゃん。最近、遼には会った?」

「ん? 遼なら昨日も会ったけど」

「そんなにしょっちゅう会ってるの? 仲良いんだね、私なんて二ヶ月以上会ってないよ」

「へえ。珍しいな。前はホントの兄妹みたいにくっついてたのに」

「ちょっと、なかなか会いに行けてなくて。遼は元気にしてる?」

「別に普通だ」


視線を上げずに兄は素っ気なく答える。

私は冷蔵庫まで歩いて、麦茶を取り出した。


「まだ彼女と付き合ってるのかな?」
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