雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~
「そうなの? まあ、お兄ちゃんの彼女のわけないか。こんなキレイな子、お兄ちゃんにはもったいないもんね」

「はいはい、いいから早く上に戻れよ。練習の邪魔だから」


兄は私を睨みつけ、しっしっと追い払う仕草をする。

私は気にせず、ペットボトルの緑茶を3人に配った。

そのあとジンと愛梨ちゃんに椅子を用意してあげると、二人はやけに離れて座った。

本当に兄の言うとおり、付き合ってはいないみたい。

私はすぐに戻るつもりだったから、椅子には座らず、壁にもたれて愛梨ちゃんに話しかけてみた。


「愛梨ちゃんはいいなー。こんなモデルみたいな外見の上に、歌まで上手くて」

「え、そんなことは……」

「彼氏はいるの?」

「……いないよ」


愛梨ちゃんは長い睫毛を伏せ、ゆっくりと首を振る。


「えー、絶対いると思ったのに。こんな可愛い子を放っておく意味がわかんない」

「だから、みんなのアイドルなんだって言っただろ」


ペットボトルの緑茶を飲みながら兄が言うのを私は一瞥し、「変なの」とつぶやく。

もし私が男だったら、絶対放っておかないのに。


「ねえ、どんな人が好み?」


身を乗り出して、興味津々な目つきで私は聞く。

すると愛梨ちゃんは、ペットボトルを両手で持ったまま固まってしまった。
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