雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~



遼の家はいつ見ても綺麗に片付いている。


「お酒臭いかもしれないけど、ごめん」と言いながらリビングへ進んでいく遼。

ジャケットを脱ぎネクタイを緩める、その大人びた姿につい見惚れてしまう。


「遼って、スーツが似合うよね」

「……そう? 今日は仕事が終わってから、そのまま飲みに行ったから着替えてないんだ」

「そっか。私はまだ学生だから、スーツにはあんまり縁がなくて。憧れるなぁ」


遼は私にソファをすすめると、自分は向かいに腰を下ろした。


「紗矢花。彼氏と何があったの?」


心配そうな遼の表情から目をそらし、私は言葉を探す。


「……もう、響とはダメかも」


ソファに深く座った私は、吐息混じりにつぶやいた。


「彼が私に合鍵をくれなかった理由が、やっとわかったんだ。彼の家に二人でいたら、合鍵を使って家に入ってきた女の人がいて……」


膝に置いた手に力が入る。握りしめるようにスカートを掴む。


「響は、その女の人と出て行ったの」


あのときのことをはっきりと思い出し、心を失くした私の目は宙を彷徨う。
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